[研究成果] 北村班の研究がBlood誌にアクセプトされました!
2020.05.15
Takeda, R., Asada, S., Park, SJ., Yokoyama, A., Becker, HJ., Kanai, A., Visconte, V., Hershberger, C., Hayashi, Y., Yonezawa, T., Tamura, M., Fukushima, T., Tanaka, Y., Fukuyama, Matsumoto, A., Yamasaki, S., Nakai, K., Yamazaki, S., Inaba, T., Shibata, T., Inoue, D., Honda, H., Goyama, S., Maciejewski, JP., and Kitamura, T. (2020) HHEX promotes myeloid transformation in cooperation with mutant ASXL1. Blood: in press
ASXL1変異は様々な骨髄性腫瘍で頻回に認められる予後不良因子である。本研究室の先行研究である造血器特異的ASXL1変異ノックインマウスの解析により、ASXL1変異は骨髄異形成症候群様の病態を惹起する一方、この変異単独では白血病発症には不十分であった。また、レトロウィルス遺伝子挿入変異解析では、ASXL1変異骨髄細胞から白血病を発症した複数個体で共通してHHEX遺伝子近傍にレトロウィルスの挿入を認めた。そこで、本研究ではASXL1変異とHHEXの白血病原性における協調作用について検討した。
ASXL1変異とHHEXは協調してin vitroでは造血幹前駆細胞の細胞増殖・コロニー形成能を促進し、in vivoでは骨髄系細胞の分化を強く抑制し、約一年の経過観察にて約半数の個体で白血病を発症した。これらの協調作用はRUNX1-ETOおよびFLT3-ITD白血病モデルでも確認された。一方、内在性HHEXはASXL1変異を有する白血病細胞の生存に重要であった。RNAシークエンス、クロマチン免疫沈降シークエンス解析から、ASXL1変異とHHEXの標的遺伝子としてMYBとETV5を同定した。HHEXはMYBおよびETV5のプロモーター領域への結合を介して遺伝子発現上昇を引き起こし、ASXL1変異はH2AK119ubの脱ユビキチン化を介して、これらの遺伝子のプロモーター領域へのHHEXの結合を促進した。また、MYBもしくはETV5の発現上昇は、ASXL1変異白血病細胞の生存に重要であった。
以上より、本研究ではASXL1変異とHHEXは協調して、MYB及びETV5の発現上昇を介して、骨髄性白血病原性を促進することを明らかにした。