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[研究成果] 石黒班の研究がCell Reports誌にアクセプトされました!

2020.04.29

Takemoto K., Tani N., Takada Y., Fujimura S., Tanno N., Yamane M., Okamura K., Sugimoto M., Araki K., Ishiguro K.  Meiosis-specific factor C19orf57/4930432K21Rik/BRME1 modulates localization of RAD51 and DMC1 to DSBs in mouse meiotic recombinationCell Reports 31, 107686 (2020)


熊本大学発生医学研究所の石黒班では、以前減数分裂のスイッチを入れる遺伝子MEIOSINを発見した際に、それによって数百種類におよぶ減数分裂に関わる遺伝子が一斉に活性化されることを明らかにしていました。それらの中には機能未解明のまま、まだ十分に解明されていない遺伝子が多く残されていることもわかっていました。今回、そのうちの一つの正体不明の遺伝子C19ORF57についてより詳細な解析を行いました。

質量分析法を駆使した解析の結果、C19ORF57がBRCA2とよばれるタンパク質と結合することが判明しました。先行研究により、乳がん抑制遺伝子産物BRCA2はRAD51リコンビナーゼとともにDNA損傷修復に働く重要な働きがあることがわかっています。C19ORF57は減数分裂組換え開始時に、BRCA2/RAD51をDSBに呼び寄せる役割を果たしていることを突き止めました。

露出したDSB部位には通常single strand DNA(ssDNA)結合因子が結合することが知られています。減数分裂では、通常型のssDNA結合因子(RPA)以外に、その時期に特異的に発現するssDNA結合因子(MEIOB, SPATA22) の存在が知られています。C19ORF57は減数分裂型のssDNA結合因子MEIOB, SPATA22に結合して、BRCA2/RAD51の着地を助けていると推定されました。

さらに遺伝子改変マウスを用いた検証の結果、減数分裂組換えの素反応がうまく進行していないことを示唆する結果が観察されました。通常、哺乳類細胞ではDSBに対して非相同末端結合(NHEJ)の仕組みによって修復される傾向が高いことが知られています。C19ORF57は減数分裂組換えの際に、相同染色体を鋳型にした相同組換えがより有利に働くように機能していることが推測されました。

今回の研究によりC19ORF57が生殖細胞内のDNA損傷修復で重要な役割を演じていることがわかりました。MEIOSINの指令下で働くことが予想される他の機能未解明の遺伝子の働きについてはまだ十分に解明されていません。今後は卵子・精子の形成過程におけるこれら他の遺伝子の働きも同時に解明することにより、減数分裂の理解に大いに貢献することが期待されます。