[研究成果] 北村班の研究がSci Rep誌に掲載されました!
2019.09.02
Tamura, M., Yonezawa, T., Liu, X., Asada, S., Hayashi, Y., Fukuyama, T., Tanaka, Y., Kitamura, T., and Goyama, S. Opposing effects of acute versus chronic inhibition of p53 on decitabine’s efficacy in myeloid neoplasms. Sci. Rep. 9:8171 (2019)
p53欠失骨髄系腫瘍細胞のデシタビン感受性はp53の発現を抑制する時期によって異なる
p53はヒトの腫瘍で最も高頻度に変異が見られる遺伝子である。最近の臨床研究で、p53変異を有するMDS (骨髄異形成症候群) やAML (急性骨髄性白血病) 患者にはDNAメチル化阻害剤デシタビンの有効性が高いことが示された。一方で、p53変異の有無はデシタビンの有効性に影響しないという報告もあり、p53変異とデシタビン感受性の関係は未解決の重大な課題であった。本研究では、マウスモデルを用いてAMLやMDSにおけるp53変異の役割を評価した。
まず、AML細胞およびMDS/AML細胞においてCRISPR/Cas9によりp53の欠失を誘導したところ、デシタビンへの感受性は低下した。一方、p53ノックアウトマウスの骨髄細胞に白血病遺伝子を導入して作製したp53欠失AML細胞では、デシタビンへの感受性が亢進していた。すなわち、AML細胞においてp53の欠失を急激に誘導するとデシタビン感受性が低下するのに対し、慢性的なp53欠失は逆にデシタビン感受性を向上させることが判明した。
本研究では、p53を欠失する時期の違いがデシタビンへの感受性の違いを生むことを明らかにした。臨床でp53変異を有する患者にデシタビンが効きやすい理由は、p53の不活性化がデシタビンへの感受性に直接影響しているのではなく、p53の不活性化が引き起こす二次的なゲノムまたはエピゲノムへの影響によるものであると考えられる。