組織・研究内容

研究課題名

エピゲノムリプログラミング過程のゆらぎに関わるクロマチン高次動態の解明

研究代表者

横林 しほり

Shihori Yokobayashi

京都大学iPS細胞研究所・大学院医学研究科機能微細形態学斎藤通紀研究室・特定拠点講師

研究内容

エピゲノムリプログラミングは、エピゲノム状態のゲノムワイドな変化を介して細胞の運命変化や初期化を促す生命現象であり、哺乳類の初期胚や生殖細胞の発生、さらにiPS細胞(人工多能性幹細胞)の樹立に重要な役割を果たす現象です。近年のクロマチン研究から、エピゲノム状態の維持および変化は、クロマチンの高次動態(立体的相互作用や核内空間的配置)と連動しながら協調的に制御されていることが示唆されています。しかし、リプログラミング過程で起きるゲノムワイドなエピゲノム変化が高次クロマチン動態に与える影響、およびその相互関係における理解はまだほとんど成されていません。私はこれまで、ヒトiPS細胞を起点とした試験管内始原生殖細胞誘導系の確立と、細胞株による分化傾向性の違いを解析してきました。さらに、株間比較エピゲノム解析により多様性(多型)を示す領域を同定し、細胞機能への影響の解析を進めてきました。本研究では、これらのエピゲノム多型領域を基盤とし、ヒトiPS細胞のエピゲノム状態複製維持に関わる高次クロマチン動態の連関機序の理解を目指します。さらに、試験管内始原生殖細胞誘導系を用いて、ヒトiPS細胞株のエピゲノム多型が、始原生殖細胞で誘発されるエピゲノムリプログラミング過程およびその後の生殖細胞分化に与える影響を、高次クロマチン動態に着目して理解することを目指します。これらの研究は、エピゲノムリプログラミング現象に伴う非ゲノム情報の変換および維持を協調する分子制御メカニズムの理解、さらにはエピゲノムリプログラミング過程のロバストネスの理解につながることが期待されます。

主な論文

  1. Yamashiro, C., et al., Yokobayashi, S., et al., Generation of human oogonia from induced pluripotent stem cells in culture. Nat Prot 15, 1560-1583 (2020)
  2. *Yokobayashi, S. and *Saitou, M., Reconstitution of germ cell development in vitro. Cell Biology of the Ovary Springer, Singapore (2018)
  3. *Yokobayashi, S., et al., *Saitou, M., Clonal variation of human induced pluripotent stem cells for induction into the germ cell fate. Biol Reprod 96, 1154-1166 (2017)
  4. Sasaki, K., Yokobayashi, S., et al., co-first author, Robust in vitro induction of human germ cell fate from pluripotent stem cells., Cell Stem Cell 17, 178-94 (2015)
  5. Yokobayashi, S., et al., *Peters, AH., PRC1 coordinates timing of sexual differentiation of female primordial germ cells. Nature 495, 236-40 (2013)