研究代表者

池田　陽子

Yoko Ikeda

岡山大学資源植物科学研究所 環境応答機構研究グループ・准教授

DNAメチル化は「非ゲノム情報」のうち唯一世代を超えて安定的に伝わることが証明されている修飾で、クロマチンとの相互作用を介して遺伝子の発現制御に関わることが知られています。近年、DNAメチル化の複製機構に関わる因子が同定され、細胞分裂の際DNAメチル化を安定的に維持する機構が存在することが徐々に明らかになっています。また、DNAメチル化は減数分裂前後の生殖過程でダイナミックに変化し、個体発生に寄与することも知られています。DNAメチル化の次世代への伝達機構については、動物と植物の間で違いがみられ、動物では生殖系列でDNAメチル化がリプログラミングされ、雌雄のゲノムの差が生じる一方、被子植物では減数分裂後、胚乳系列でのみDNAメチル化が解除され、卵及び精細胞ではDNAメチル化が維持されることが知られています。そのため植物ではDNAメチル化の変化が次の世代に伝わりうるとされています。私達はこれまでにシロイヌナズナを用いて、この分子機構の一端を明らかにしてきました。さらに、植物特有のDNAメチル化維持機構がどのように進化してきたかを明らかにするため、進化上、陸上植物の基部に位置するゼニゴケを用い解析を進めています。最近の解析から、ゼニゴケの生活環の中でDNAメチル化がゲノムワイドに変化することが明らかになっており、ゼニゴケにおけるDNAメチル化制御機構は被子植物にはない、いくつかの動物との共通性が示唆されています。本研究ではゼニゴケの減数分裂前後におけるDNAメチル化の消去・維持機構に焦点を当て、制御の実体を明らかにすることを目指します。