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[研究成果] 鵜木(中西班)と有田班の共同研究がHum Mol Genet誌に掲載されました!

2022.12.03

Unoki M, Velasco G, Kori S, Arita K, Daigaku Y, Au Yeung WK, Fujimoto A, Ohashi H, Kubota T, Miyake K, Sasaki H. Novel compound heterozygous mutations in UHRF1 are associated with atypical immunodeficiency, centromeric instability, and facial anomalies (ICF) syndrome with distinctive genome-wide DNA hypomethylation. Hum. Mol. Genet. 2022. Dec 2;ddac291. doi: 10.1093/hmg/ddac291. Online ahead of print.


DNAメチル化異常を伴う先天性疾患ICF症候群の新たな原因遺伝子としてUHRF1を同定


Immunodeficiency centromeric instability facial anomalies(ICF)症候群は、先天性の免疫不全疾患で、患者の染色体のセントロメア・ペリセントロメア反復配列は顕著に低メチル化しており、染色体が不安定化して、分枝染色体と呼ばれる染色体融合像を示す。ほとんどの患者は、DNMT3BZBTB24CDCA7HELLSのいずれかの遺伝子に変異を有しており、de novo DNAメチル化機構もしくは複製非共役的な維持DNAメチル化機構が障害されている。しかしながら、少数のICF症候群患者の原因遺伝子は依然不明である。今回私たちは、そのようなICF患者のうち1名が、UHRF1遺伝子に、これまで報告のない2つの変異(c.886C > T  [p.R296W]と c.1852C > T [p.R618X])を有する複合ヘテロ接合体であることを突き止めた。 UHRF1はDNMT1と共に働く維持DNAメチル化に必須のタンパク質である。R618X変異はUHRF1のSRAドメインとRINGドメインをつなぐリンカー領域に位置し、R296W変異はTTDとPHDをつなぐリンカー領域に位置していた。RNAおよびタンパク質の発現量解析およびタンパク質構造解析の結果、R618X変異はナンセンス変異依存mRNA分解を引き起こすことが示唆され、R296W変異はUHRF1のタンパク質高次構造を変化させることがわかった。またゲノムワイドなDNAメチル化解析の結果、この患者はICF症候群患者の主徴であるセントロメア・ペリセントロメア反復配列の低メチル化を有することがわかった。しかしながら、この患者は、他のICF症候群患者と異なる特徴的な低メチル化パターンを有していることもわかった。生化学的解析の結果、R296W変異は、既知の結合タンパク質であるLIG1との結合親和性を強めることがわかった。また、R296W変異はUHRF1の既知のユビキチン化基質であるヒストンH3およびPAF15に対するユビキチン化活性を低下させることもわかった。私たちは、この患者のモデル細胞株を樹立し、R296W変異がペリセントロメア反復配列の低メチル化を引き起こすことを確認し、この変異がUHRF1の機能を低下させるhypomorphicな変異であることを証明した。UHRF1とLIG1、PAF15、ヒストンH3との適切な相互作用は、維持DNAメチル化機構に必須であるため、R296W変異はこの機構を阻害する可能性がある。さらに、この患者の低メチル化パターンが特徴的であり、R296W変異はUHRF1とde novo DNAメチル化酵素DNMT3Bとの結合を著しく減弱させることがわかったことから、R296W変異はde novo DNAメチル化にも影響する可能性がある。ヒトにおいて、患者で見つかったUHRF1の変異がDNAメチル化へ影響を及ぼすことを実験的に証明したのは今回が初めてであり、今回の報告は、DNAメチル化の制御におけるUHRF1の役割についての理解をより深めるものである。