肝再生における非ゲノム情報の変遷と回帰の加齢依存的変化の解明
研究内容
加齢に伴って組織・臓器の恒常的機能は低下し、同様に損傷後の再生能も低下します。これは誰もが老いとともに感じるありふれた事象ですが、加齢に伴う組織再生能の低下は疾病の発症にも関係することから、その理解や制御は我々が健康体で生活を送れる「健康寿命」を充実させ、それを延ばす意味でも大変重要です。一生を通じて代謝中枢的な役割を担い続ける肝臓は、古くから高い再生能をもつことで知られていますが、その肝臓も例外ではなく、加齢によってその再生能が低下することが50年以上も前から知られています。しかし、加齢に伴う肝再生能の低下がどういった分子機構によって制御されているのかは未だによくわかっていません。そこで本研究では、加齢に伴う肝再生能の低下を肝細胞に生じる非ゲノム情報の変遷と回帰の加齢依存的な変化として捉え、そのメカニズムの解明から肝臓の再生原理究明を目指します。本研究により、加齢に伴う肝再生能の低下を分子レベルでより深く理解することができれば、個体老化に基づく肝再生不全を基盤としてそこに様々なファクター(肥満やアルコールの過剰摂取など)が加わって生じる疾患(脂肪肝やアルコール性肝炎、非アルコール性脂肪性肝炎など)の発症機序の解明や診断、治療法の開発にも貢献できると考えられます。
主な論文
- Inada H, et al., *Suzuki A.(17人中17番目)Direct reprogramming of human umbilical vein- and peripheral blood-derived endothelial cells into hepatic progenitor cells. Nature Commun 11(1):5292 (2020)
- Horisawa K, et al., *Suzuki A.(7人中7番目)The dynamics of transcriptional activation by hepatic reprogramming factors. Molecular Cell 79(4):660-676 (2020)
- Yamamoto J, et al., *Suzuki A.(5人中5番目)Cell aggregation culture induces functional differentiation of induced hepatocyte-like cells through activation of Hippo signaling. Cell Reports 25(1):183-198 (2018)
- Miura S and *Suzuki A. Generation of mouse and human organoid-forming intestinal progenitor cells by direct lineage reprogramming. Cell Stem Cell 21(4):456-471 (2017)
- Sekiya S and *Suzuki A. Direct conversion of mouse fibroblasts to hepatocyte-like cells by defined factors. Nature 475(7356):390-393 (2011)