セントロメアの維持・形成に関与する非ゲノム情報
研究内容
生物が生命を維持するためには、染色体が安定に複製・分配されることが必要です。真核生物における正確な染色体分配には、セントロメアと呼ばれる特殊領域が重要であり、セントロメア上に形成されるキネトコア構造と紡錘体微小管との適切な結合が、正確な染色体分配に必須となります。興味深いことに、多くの生物のセントロメアは、塩基配列による“ゲノム情報”では規定されずに、エピジェネティックな“非ゲノム情報”によって規定されます。CENP-Aと呼ばれるセントロメアに特異的なヒストンがエピジェネティックな目印として働いていると考えられてはいますが、セントロメアを規定するための“非ゲノム情報”の実体については不明な点が多いです。研究代表者の深川は、これまでに、セントロメア及びキネトコアタンパク質の同定やその機能・構造解析、セントロメアゲノムの配列解明などの研究成果をあげてきましたが、その知識をベースに、本研究においては、セントロメアが形成される際に必要な“非ゲノム情報”の実体の解明を目指します。特に、ネオセントロメアと3C、4C、Hi-C法などのゲノム解析技術を組み合わせ、セントロメアクロマチンのコンパクトさを立証します。その上で、このコンパクトなクロマチン構造が形成されるための分子機構とその生物学的意義を、構造生物学、細胞生物学、ゲノム工学を併用して明らかにします。
主な論文
1) Ariyoshi, M., et al.,*Fukagawa, T. (12人中12番目) Cryo-EM structure of the CENP-A nucleosome in complex with phosphorylated CENP-C. EMBO J 40, e105671 (2021)
2) Watanabe, R., et al., *Fukagawa, T. (6人中6番目) CDK1-mediated CENP-C phosphorylation modulates CENP-A binding and mitotic kinetochore localization. J Cell Biol 218, 4042-4062 (2019)
3) Hara, M., et al., *Fukagawa, T. (6人中6番目) Multiple phosphorylations control recruitment of the KMN network onto kinetochores. Nature Cell Biol 20, 1378-1388 (2018)
4) Hori, T. , et al., *Fukagawa, T., (8人中8番目) Association of M18BP1/KNL2 with CENP-A Nucleosome Is Essential for Centromere Formation in Non-mammalian Vertebrates. Dev Cell 42, 181-189 (2017)
5) Nishino, T., *Fukagawa, T., et al., (9人中9番目) CENP-T-W-S-X Forms a Unique Centromeric Chromatin Structure with a Histone-like Fold. Cell 148, 487-501 (2012)