クロマチン制御複合体のインセル解析
研究内容
申請者はこれまで、マウスES細胞やマウス初期胚における、転写制御機構について研究してきた。これまでに多くの転写制御因子が同定され、エピジェネティクスやクロマチン高次構造の重要性が明らかとなってきたが、現在においても転写プログラムの全容が明らかになったとは到底言えない。遺伝子の転写活性は、クロマチンに結合する様々な転写因子が協調的に機能することによって制御される。クロマチン上に形成される多種多様な転写制御因子の集積(超分子複合体)とエピゲノム修飾の組み合わせこそが、複雑な転写ネットワークの制御を担うと考えられる。遺伝子発現の制御機構を包括的に理解するためには、従来の個々の分子中心の研究から更に一歩踏み出し、① クロマチン上での転写複合体の実態を明らかにすること、更には②エピゲノム修飾と複合体との組み合わせによるクロストークを理解する必要がある。しかしながら、従来のChIP-seqなどのクロマチン解析技術や質量分析を用いた複合体解析では、クロマチン上での複合体形成、さらにはエピゲノム情報とのクロストークを解析することは困難である。 本研究では、転写の現場である個々の遺伝子座のリアルな実態を把握するために、クロマチン上の複数の標的因子(タンパク質複合体あるいはエピゲノム修飾)を同時に検出するインセル技術を開発する。
主な論文
1. Kurihara M, Miyanari Y. et al., (7人中7番目), Genomic profiling by ALaP-seq reveals transcriptional regulation by PML bodies through the DNMT3A exclusion. Molecular Cell, S1097-2765. 2020
2. Fuchigami T, Miyanari Y, et al., (9人中4番目) Discovery of INCENP-derived small peptides for cancer imaging and treatment targeting survivin, Cancer Science, 111(4):1357-1366, 2020
3. Miyanari Y. et al., (3人中`番目) Live visualization of chromatin dynamics using fluorescent TALEs, Nature structural & molecular biology 20(11) 1321-1324 2013
4. Miyanari Y. and Torres-Padilla ME, (2人中1番目) Control of ground-state pluripotency by allelic regulation of Nanog, Nature 483(7390) 470-473 2012
5. Li Y*, Miyanari Y*, et al., (8人中2番目), Sequence-specific microscopic visualization of DNA methylation status at satellite repeats in individual cell nuclei and chromosomes, Nucleic acids research 41, e186 2013