ヒストンリーダーによる幹細胞のエピゲノム複製機構
研究内容
幹細胞のエピゲノムは、自己複製の際には正確に維持されますが、分化シグナルに対応して多様に変化します。特に、幹細胞の自己複製からの退出の際には、非対称分裂によって2つの娘細胞に異なるエピゲノムが形成・継承される必要があります。しかしながら、哺乳動物細胞の非対称分裂において、異なるエピゲノムがどのように形成・継承されるのかは明らかではありません。また、DNA複製後のヒストンメチル化の複製に関して、ライターとリーダーの相互作用、リーダーのbridging作用が報告されていますが、未だ不明な点が多くあります。私はこれまでに、ES細胞のH3K9me3の複製機構に関わる可能性のあるヒストンリーダーを同定し、ES細胞の自己複製からの退出に重要であることも明らかにしました。そこで本研究では、マウスES細胞の非対称分裂時のH3K9me3複製機構における、ヒストンリーダーの役割を解明します。具体的には、ヒストンリーダーの複製フォークへの集積・共局在因子の同定・新生クロマチン上のH3K9me3修飾への影響を明らかにします。本研究によって、非ゲノム情報の複製機構におけるヒストンリーダーの重要性が示されるだけでなく、分化シグナルに応じてエピゲノムが多様に変化する仕組みの解明、エピゲノムの非対称的複製の分子基盤の解明に繋がることが期待されます。
主な論文
- *Hattori, N., et al., *Ushijima, T. (11人中1番目) Combination of a synthetic retinoid and a DNA demethylating agent induced differentiation of neuroblastoma through retinoic acid signal reprogramming. Br J Cancer 125, 1647 (2021)
- Hattori, N., et al.,*Ushijima, T. (8人中1番目) Novel prodrugs of decitabine with greater metabolic stability and less toxicity. Clin Epigenetics 11, 111(2019)
- Zong, L.,‡, Hattori, N.,‡ et al., *Ushijima, T. (7人中2番目) LINC00162 confers sensitivity to 5-aza-2′-deoxycytidine via modulation of an RNA splicing protein, HNRNPH1. Oncogene 38, 5281 (2019) ‡Equally contributed.
- Hattori, N., et al., *Ushijima, T. (5人中1番目) Visualization of multivalent histone modification in a single cell reveals highly concerted epigenetic changes upon differentiation of embryonic stem cells. Nucleic Acids Res 41, 7231 (2013)
- Hattori, N., et al., *Shiota, K. (7人中1番目) Epigenetic control of mouse Oct-4 gene expression in embryonic stem cells and trophoblast stem cells. J Biol Chem 279, 17063 (2004)