[研究成果] 北村班の研究がNat Commun誌に掲載されました!
2022.01.12
Tanaka, Y., Fukushima, T., Mikami, K., Tsuchiya, S., Tamura, M., Adachi, K., Umemoto, T., Watanabe, N., Morishita, S., Imai, M., Nagata, M., Araki, M., Takizawa, H., Fukuyama, T., Lamagna, C., Masuda, E., Ito, R., Goyama, S., Komatsu, N., Takaku, T., and Kitamura, T. Eliminating chronic myeloid leukemia stem cells by IRAK1/4 inhibitors. Nat Commun 13(1):271 (2022)
慢性骨髄性白血病(chronic myelogeneous leukemia: CML)の原因はPh1染色体と呼ばれる染色体転座t(9;21)によって生じる融合遺伝子BCR-ABLである。融合によって活性化されたチロシンキナーゼABL1が造血幹/前駆細胞および分化細胞の無限増殖がCMLの根幹である。近年、種々のチロシンキナーゼ阻害剤(tyrosine kinase inhibitor: TKI)がCMLに対して著明な効果をあげたことによってCMLの予後は劇的に改善した。しかしながらCMLが完全寛解しても、白血病幹細胞が残存し再発することが多い。本研究はマウスモデルCMLモデルにおいてCML幹細胞を解析し、CML完治を目指しうる治療法を模索した。
CML幹細胞はBCR-ABL+、LSK(lineage-/Sca1+/cKit+)分画に存在するが、この分画を我々が開発したG0マーカーと新たな幹細胞マーカーCD27でさらに4つの分画に分けた。G0マーカーマウス(Fukushima et al. Cell Rep, 2019)の骨髄細胞を利用したマウス移植モデルを行い、CML幹細胞が主にG0マーカー/CD27共陽性分画に含まれることが判明した。この分画を調べたところ、IRAK-NF-kB経路が活性化し、その下流でPD-L1が発現していた。そこでIRAK阻害剤と抗PD-L1抗体の治療効果を調べたところ、それぞれ単独で若干の効果を示し、TKIのグリベックとの併用では強い協調効果が認められた。中でもIRAK阻害剤と抗PD-L1抗体の併用療法はマウスCMLの治癒をもたらした。本研究成果はCMLの根治療法開発へのヒントを与えるものである。