組織・研究内容

研究課題名

神経幹細胞の運命転換における非ゲノム情報の複製・維持そして変換機構の解明

研究代表者

岸 雄介

Yusuke Kishi

東京大学定量生命科学研究所・准教授

研究内容

幹細胞は、発生初期には自己複製によりその数を増やし、あるタイミングになると分化細胞を産生します。すなわち、複製・維持されている非ゲノム情報を、あるタイミングで変換することで、適切な組織を構築することができます。脳の高次機能をつかさどる大脳新皮質の幹細胞である神経幹細胞は発生早期においては、盛んに増殖を繰り返すことで神経幹細胞の数を増やし(増殖期)、発生中期にはニューロンを産生します(ニューロン分化期)。この神経幹細胞の運命転換のタイミングは厳密に制御される必要があります。例えば増殖期からニューロン分化期への移行のタイミングが遅くなると、神経幹細胞の数が過剰になって脳が異常に大きくなる可能性があるからです。実際に、このタイミングの制御異常で発達性神経疾患を発症することが近年の研究で示唆されてきています。しかしながら、現在までに神経幹細胞の増殖期からニューロン分化期への移行メカニズムはほとんど明らかにされていません。そこで本研究では、増殖期からニューロン分化期への運命転換において、非ゲノム情報であるオープンクロマチン領域が複製・維持あるいは変換するメカニズムを包括的に明らかにすることを目指します。

主な論文

  1. Nakagawa, T., et al., *Kishi, Y. (4人中4番目) Epigenetic regulation for acquiring glial identity by neural stem cells during cortical development. GLIA doi: 10.1002/glia.23818 (2020)
  2. Sakai, H., et al., *Kishi, Y. (6人中6番目) Plag1 regulates neuronal gene expression and neuronal differentiation of neocortical neural progenitor cells. Genes to Cells 24(10):650-666 (2019)
  3. Eto, H., *Kishi, Y., et al. (4人中2番目) The Polycomb group protein Ring1 regulates dorsoventral patterning of the mouse telencephalon. bioRxiv 2019, doi.org/10.1101/639492
  4. Tsuboi, M., *Kishi, Y., et al. (6人中2番目) Ubiquitination-independent repression of PRC1 targets during neuronal fate restriction in the developing mouse neocortex. Developmental cell 47, 758–772 (2018)
  5. Kishi, Y., et al. (4人中1番目) HMGA regulates the global chromatin state and neurogenic potential in neocortical precursor cells. Nature Neuroscience 15, 1127-1133 (2012)